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平成29年1月20日
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第2回 書評コンテスト 審査結果発表

「書評コンテスト」にたくさんのご応募をありがとうございました。

厳正な審査の結果、次の通り入賞者を決定いたしました。 謹んでお知らせいたします。

講評
審査委員長 荒川 敏彦

 今年で2回目を向かえる書評コンテストには、昨年を上回る数の応募がありました。応募して下さった皆さまに感謝します。すべての応募作について慎重な審議をした結果、最優秀賞(1名)、優秀賞(1名)、佳作(5名)の合計7名の作品が入賞しました。

 書評を書くという経験は、これまでなかった人がほとんどだと思います。コンテストへの応募を考えたけれど、書評の書き方が分からなかったという人もいたかもしれません。書評には新聞や雑誌の書評から学術雑誌の書評まで多様な書き方があり、決まった書き方はありません。それを「難しさ」ととるのではなく「自由さ」ととって、自分の視点からのびのびと書評してもらいたいと思います。
 しかしどのような書評であっても、書評としての最低限の要件はあります。その本の価値を評価して他者に伝える、という点です。自分の感想を述べただけでは書評として不十分ですし、他人にオススメをするだけ――売り文句だけ、または褒めちぎるだけ――でもよい書評にはなりません。この書評コンテストでは、①内容理解の正確さ、②批評の的確さ、③文章力、の3点を基準に審査を進めました。

 多くの応募の中から最優秀賞に選ばれたのは、商経学部2年の吉田祥紹さんです。課題部門の指定図書の中から、平田オリザの『下り坂をそろそろと下りる』を取りあげた書評でした。吉田さんの書評は、内容理解、批評の的確さ、文章力のいずれの点でも高い評価を受け、とくに冒頭で司馬遼太郎と著者である平田オリザの言葉を並べて引用し、そのコントラストで読み手を引きつけた点が高く評価されました。書評末尾でも、安倍首相と著者との正反対の日本社会像を表現した言葉を引用し、本全体の主張を象徴的にまとめています。本書は、日本はもはや工業立国ではなく、成長社会に戻ることもなく、アジア唯一の先進国という位置にもないという認識を出発点にしています。この下り坂を「そろそろと」下ろうというのが本書の主張です。吉田さんは、成長一辺倒であった従来の考え方と「下り坂」という認識とを対比した印象的なフレーズに目をつけ、そこを引用することで、著書の主張を鮮明に示して見せてくれたのでした。
 一般に、的確な批評をするためには、その本のどこに着目するかが非常に大切です。その本の核心はどこか、それを表現するのに適した表現は何か。場合によっては、著者の文体が重要な意味をもつこともあるでしょう。本を選び、視点を定める「眼力」は、多くの本を読むことでしか養えません。印象的なフレーズに目をとめて効果的に引用し、全体の内容もただ章を追って順に要約するというより、内容を咀嚼して紹介してくれた本書評は、吉田さんの普段の読書経験の豊富さをうかがわせるものであったように思います。

  優秀賞には、国際教養学部1年生の東峰千佳さんによる『本物の英語力』の書評が選ばれました。最優秀賞と同様、課題部門からの受賞となりました。本書は他の指定図書に比べて書評が難しいのではないかとも思われましたが、一般的な見解や自分の経験と照らし合わせることで、著者が述べる「本物の英語力」をつけるための方法がいかに優れたものであるか、説得力をもって論じています。 本書評は、「読ませる」文章力と、読み手が思わず膝を打つ、著者に対する的確なツッコミという点で高く評価されました。的確な批評をするためには、著者の主張に呑み込まれることなく、またいたずらに敵対的にもならない、適度な距離を保つことが必要です。なぜ著者の主張が素晴らしいのかについて、共感しながらも少しだけ引いた目線から的確に評価できている点が評価されました。読みやすさと表裏一体な砕けた文体は、独り相撲で終わりかねない危うさもあるのですが、東峰さんは絶妙なバランス感覚で読みやすい書評にまとめています。今後、さまざまな文体にチャレンジし、腕を磨いてほしいと思います。授業のレポートやゼミの発表は、よい機会となるでしょう。

  佳作は、課題部門から1点、自由部門から4点選ばれました。
  課題部門から選ばれたのは『ブラックバイト』を書評した長谷川裕基さんの作品です。ブラックバイトは学生の皆さんにとって身近であり、切実な問題です。この問題を正面から考える上で必読とも言える本書について、長谷川さんは学生の立場からリアルな感覚をもってまとめ、高い評価を得ました。できればもっと具体的に突っ込んだ批評があると、よりよい書評になりました。また誤字や言葉の選び方にもう少し注意がされていると、なおよかったと思います。

  自由部門からは4点選ばれました。まず『母という病』を取り上げた畑中舞さんの書評は、文章のリズムがよく、読ませる書評として高く評価されました。ただ、数字をあげて説得的に論じている例として言及された部分は本書のなかでわずかな部分でしかなく、本全体としても数字をあげた議論はあまりありません。本書の内容と批評がずれてしまった点が、他の部分がよかっただけに惜しまれます。

  都築晴香さんは『雇用破壊 三本の毒矢は放たれた』を取り上げ、高い評価を得ました。アベノミクスの3本の矢を「毒矢」として徹底的に批判する本書を受け止めた書評でした。もう少しまとめ方を工夫し、自分なりの視点から本書に評価を下せると一層よかったでしょう。

  片岡諒大さんは『ビジネスのヒントは駅弁に詰まっている』を取り上げ、高い評価を得ました。駅弁販売の盛衰をコンビニの隆盛と関わらせる観点に焦点化した書評であり、論点が明快で引き締まった内容でしたが、段落分けがほとんどないなど、読み手を考慮した記述に工夫があるとなおよかったでしょう。

  『孤独の価値』を書評した阿部拓夢さんの書評は、本の選定という点でポイントをあげています。自由部門では、単に自分が読んだ本を書評するのではなく、どの本が書評に値するかを自分で見極める必要があります。現代社会では、友達の多さを競うかのような風潮もあります。そのような点で見れば、「孤独」の価値という、一見すると世の中の風潮に逆らうかのような著者の主張をよくくみ取ってまとめている点が評価されました。良いテーマにであった機会をいかし、つぎはさらに問題について掘り下げた書評をしてみるとよいでしょう。

  書評は、自分が読みとったその本の価値を、人に伝えようとするものです。そこでは、批評する自分の問題関心や視野の広さも問われます。普段の読書、普段の大学の授業を自分の中で消化していくことで、解釈も深まり、よい書評へとつながるでしょう。その本を読みながらの著者との対話、本を読みながら書評を書きながらの自己との対話、そして書かれた書評を読む未知の誰かとのまだ見ぬ対話がそこにはあります。次回の書評コンテストで多くの書評と対話できることを楽しみにしております。

【課題部門】

最優秀賞(副賞3万円)
商経学部 商学科 2年 吉田 祥紹 さん 『下り坂をそろそろと下りる』

優秀賞(副賞1万5千円)
国際教養学部 国際教養学科 1年 東峯 千佳 さん 『本物の英語力』

佳作(副賞5千円)
商経学部 商学科 2年 長谷川 裕基 さん 『ブラックバイト』


【自由部門】

最優秀賞(副賞3万円)
該当作品なし

優秀賞(副賞1万5千円)
該当作品なし

佳作(副賞5千円)
国際教養学部 国際教養学科 2年 畑中 舞 さん 『母という病』
商経学部 商学科 2年 都築 晴香 さん 『雇用破壊 三本の毒矢は放たれた』
商経学部 経営学科 2年 片岡 諒大 さん 『ビジネスのヒントは駅弁に詰まっている』
商経学部 商学科 3年 阿部 拓夢 さん 『孤独の価値』


審査員
図書館長、図書館運営委員会

表彰式
表彰式は12月12日(月) 12時15分から
会場は図書館2階のステンドグラス前で実施しました。

※ご応募された方には参加賞があります。
図書館コントロールデスクまでお越しください。



お問い合わせ
図書館コントロールデスク
E-Mail: lib@cuc.ac.jp

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