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平成30年1月23日
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第3回 書評コンテスト 審査結果発表

「書評コンテスト」にたくさんのご応募をありがとうございました。

厳正な審査の結果、次の通り入賞者を決定いたしました。 謹んでお知らせいたします。


審査委員長 荒川 敏彦

 今年で3回目となる書評コンテストでは、自由部門をなくし、新書を対象にした指定図書から選んで書評してもらう形式を取り、昨年を上回る45人から応募がありました。応募して下さった皆さまに感謝します。すべての応募作について慎重な審議をした結果、優秀賞(1名)、奨励賞(5名)の合計6名の作品が入賞しました。

 書評を書くという経験をした人は少ないと思います。コンテストへの応募を考えたけれど、書評の書き方が分からなくて断念したという人もいたかもしれません。書評には新聞や雑誌の書評から学術雑誌の書評まで多様な書き方があり、決まった書き方はありません。それを「難しさ」ととるのではなく「自由さ」ととって、自分の視点からのびのびと書評してもらいたいと思います。
しかしどのような書評であっても、書評としての最低限の要件はあります。その本を批評して他者に伝える、という点です。自分の印象や感想を述べただけでは不十分ですし、他人にオススメをするだけ――褒めちぎるだけ――でもよい書評とは言えません。自分の見方を他者に伝えるためには、それなりの文章力も求められます。この書評コンテストでは、①内容理解の正確さ、②批評の的確さ、③文章力、の3点を基準に審査を進めました。

 多くの応募作品のなかから優秀賞に選ばれたのは、山下柾樹さん(商経学部 商学科 1年)による、田中浩『ホッブズ リヴァイアサンの哲学者』(岩波新書)についての書評でした。今回の課題図書の中で、もっとも難易度の高い1冊でしたが、奇をてらわない素直な文体で、丁寧にまとめてくれました。
本学図書館が初版本(1651年)を所蔵する『リヴァイアサン』は、あまりにも有名な社会科学の古典です。山下さんは「生命の安全」という点に焦点をあて、本書で提示された「宗教と国家」という現代ホッブズ研究の潮流を踏まえながら、21世紀の現代世界との関連を視野にうまくまとめました。
書評では、その本をどのような視点で読んで見せるかが重要な鍵を握ります。山下さんは、著者の田中浩氏が戦前の生まれであるという点に着目し、そこから著者のホッブズの読み方に言及してくれました。このように、著作の内容だけではなく、著者の経歴や他の書物にも目配せをして、その本の読み方を示してみせることも、書評の重要な仕事です。
書評においては、本を自分の体験に引きつけて読むのも一つの方法です。しかしここで山下さんが示してくれたのは、自分の経験に引きつけるのではなく、本で自分を拡張すること、いわば自分を本に接続していく読み方です。本に自分を接続させることで、自分の世界を広げていく。本を読むことの大きな意義の一つは、そこにあると言えるでしょう。大学でのさまざまな学修も、それに通じています。今後のさらなる研鑽に期待しています。

 奨励賞に選ばれたのは、5人でした。吉川冴さん(国際教養学部 3年)、田福舞さん(商経学部 商学科 2年)、堂ノ上麻由さん(商経学部 商学科 2年)の3人は、竹信三恵子『正社員消滅』を書評してくれました。
現代日本では、正社員であるかどうかが非常に重要な分岐点ですが、本書はその正社員というかたちそのものが消滅するという、就活を前にした皆さんにとって衝撃的な内容を述べています。受賞には至りませんでしたが、多くの人が本書を選び、書評してくれました。そのなかで、正社員消滅の2つ意味、すなわち「非正社員の増加」による正社員の消滅と、「安定と安心の生活を担保する」という正社員がもってきた意義の消滅、この2つが的確に取り出され、本書が位置づけられているかという点で、3人の書評はそれぞれに評価すべきポイントがあり、受賞に至りました。
吉川さんは、短く歯切れのいい文体で、本書の魅力的な部分を豊富に取り出すことで、本書を読みたくなるような書評をまとめてくれました。田福さんは、正社員が消滅していくことの背景にある企業のご都合主義の問題を中心に、焦点の定まった書評に仕上げてくれました。堂ノ上さんは、章ごとの簡潔なまとめが的確であり、「現代の当たり前は異質である」という独自のタイトルを、自分の書評につけた点が評価されました。タイトルをつけることは必須要件ではありませんが、自分の視点をシンボリックに一言で表現するものでもありますので、学生の皆さんは、普段からレポートなどで意識してタイトルをつけてみて下さい。「○○学レポート」というタイトルの、何と味気ないことか!
宮澤未来さん(商経学部 商学科 1年)は、高野誠鮮『ローマ法王に米を食べさせた男』の書評で奨励賞に選ばれました。本書は、行動力に富んだ著者の実践が書かれており、読むととても元気の出る一冊です。宮澤さんは、本の内容を丹念に追うと言うよりも、行動への理念を語る著者の主張に焦点を当てて、著者のエネルギッシュな魅力を削ぐことなく、自分なりの見解を示しながらまとめてくれました。
畑中舞さん(国際教養学部 3年)は、海老原嗣生『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』の書評で奨励賞に選ばれました。畑中さんは、昨年度に引き続きの連続受賞です(審査は、各書評の執筆者が誰か分からないようにしたうえで厳正になされています)。他の皆さんも是非頑張って欲しいと思います。畑中さんのは、歯切れの良い文体で、読ませる書評を展開してくれました。ぜひ来年度もチャレンジして、三年連続の受賞を狙ってほしいと思います。

 受賞しかけた多くの作品のなかで、表記の問題で選から漏れるという作品が多く、残念でした。改善するといい点について1点、触れておきます。
それは、段落分けの問題です。異様に長い段落、あるいは逆に1文ごとに段落を分ける、意味の切れ目で1行あけるなどは、工夫の余地があります。とくに今回は、ネットの影響もあるのか、段落ごとに1行あける記述が多く見られました。紙ベースの応募作品であることを考えると、1行あける必要はなく、しっかりと段落冒頭で1文字下げるといった書式で記述してもらいたいと思います。
その他、句読点(とくに句点)の打ち方、接続詞や、「が」や「の」などの助詞の使い方など、文章表現を改善することで、よりよい作品になっていきます。誤字(誤変換)や脱字なども含め、表現上の問題は、読者をそこでつまずかせ、読む流れを断ち切ってしまうことになりがちです。単なる表現の問題と思わず、いったんプリントアウトして読み返してみることをお奨めします。

書評は、自分が読みとったその本の価値を、人に伝えようとするものです。そこには、必ず「私」がいます。したがって、批評する「私」の問題関心や視野の広さも問われているのです。普段の読書、普段の大学の授業を自分の中で消化していくことで、解釈が深まり、よい批評へとつながるでしょう。

その本を読みながらの著者との対話、書評を書きながらの自己との対話、そして書かれた書評を読む未知の誰かとのまだ見ぬ対話が、そこにはあります。次回の書評コンテストで、多くの書評と対話できることを楽しみにしております。

【課題部門】

最優秀賞(副賞3万円)
該当作品なし

優秀賞(副賞2万円)
商経学部 商学科 1年 山下 柾樹 さん 『ホッブズ リヴァイアサンの哲学者』

奨励賞(副賞1万円)
国際教養学部 国際教養学科 3年 吉川 冴 さん 『正社員消滅』
商経学部 商学科 1年 宮澤 未来 さん 『ローマ法王に米を食べさせた男』
国際教養学部 国際教養学科 3年 畑中 舞 さん 『クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方』
商経学部 商学科 2年 田福 舞 さん 『正社員消滅』
商経学部 商学科 2年 堂ノ上 麻由 さん 『正社員消滅』

審査員
図書館長、図書館運営委員会

表彰式
表彰式は12月15日(金) 12時15分から
会場は図書館2階のステンドグラス前で実施しました。

※ご応募された方には参加賞があります。
図書館コントロールデスクまでお越しください。



お問い合わせ
図書館コントロールデスク
E-Mail: lib@cuc.ac.jp

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