第4回 書評コンテスト 審査結果発表

「書評コンテスト」にたくさんのご応募をありがとうございました。
厳正な審査の結果、次の通り入賞者を決定いたしました。
 

【課題部門】

最優秀賞(副賞3万円)
該当作品なし

優秀賞(副賞2万円)
商経学部 商学科 2年 山下 柾樹 さん 『マーティン・ルーサー・キング』
国際教養学部 国際教養学科 2年 井上 智香子 さん 『語る歴史、聞く歴史―オーラル・ヒストリーの現場から』
商経学部 商学科 2年 大内 玲佳 さん 『人工知能と経済の未来-2030年雇用大崩壊』

奨励賞(副賞1万円)
商経学部 商学科 2年 鵜澤 遥 さん 『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』
商経学部 商学科 2年 清水 大輔 さん 『人工知能と経済の未来-2030年雇用大崩壊』
商経学部 商学科 2年 阿部 悠生 さん 『人工知能と経済の未来-2030年雇用大崩壊』
国際教養学部 国際教養学科 1年 北島 美優 さん 『新・冒険論』

審査員
図書館長、図書館運営委員会

表彰式
表彰式は12月12日(金) 12時20分から
会場は図書館2階の井田毅記念セミナールームで実施しました。

審査委員長 講評

荒川 敏彦

  今回は、これまで最多の67人から応募がありました。そのなかから優れた作品として選ばれた皆さん、おめでとうございます。
 みなさんがつぎの時代の社会を作り上げていく「力」をつけるきっかけとして、このコンテストを活用してもらいたいと思っています。その力とは、1つ目は著者との対話力、2つ目は自分との対話力、3つ目が他者への発信力です。
 本を読んだとき、著者の主張を理解するために、くり返し著者に問いかけなければなりません。読み進めるうちに、しだいに自分の意見が揺さぶられ、自分のなかでもう一人の自分との反問をくり返すことになるはずです。著者と、そして自己と対話をくり返しながら自分の考えを「更新」していく過程は、ときに痛みを伴うこともあるでしょう。けれどもそこにこそ、自分の世界が広がる、本を読む愉しさがあるのです。
 書評の執筆に向けて、著者や自分との対話のなかでつかみ取った問題を言葉にし、筋道立った論にまとめていく作業は、再びあらたな自分との対話であり、執筆の途中であらためて本を読み返すという著者との対話の再開でもあります。他者への発信は、必然的に、著者や自分との対話を要請してくるのです。
 そうしたことは、みなさんが日々の授業で知らず知らずのうちに実践していることです。学生のみなさんが日々学んでいる知識や発想を総動員して、本の核心に迫ってほしいと思います。
 とはいえ、本の読み方は自由です。自分が思ったポイントは著者からするとちょっとずれているかもしれません。しかしそれは、著者がまいた多様な種が、意図しないかたちで自分の中で発芽してきたということなのです。読者として、自分のなかに出てきたその芽を育てていきましょう。
 今回優秀賞に選ばれた3人は、いずれも著者との対話、自分との対話をくり返し、わかりやすく文章にまとめてくれた良い作品でした。
 2年連続で優秀賞に選ばれた山下柾樹さんは、『マーティン・ルーサー・キング』について、キング牧師にまつわる歴史が社会的また政治的な理由から、一面的につくられていくという問題に焦点をあててまとめてくれました。その本を実際に読みたくなる、そんな書評だと思います。
 井上智香子さんは『語る歴史、聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から』を読み、沖縄戦についての語りや、炭鉱労働についての語りを歴史として捉えていく意味について考察しています。そこでの一つのポイントは、女性の語りということでした。従来の歴史叙述のなかでなおざりにされてきた歴史に光をあてることの意味に注目した、読みやすい書評でした。
  大内玲佳さんは『人工知能と経済の未来――2030年雇用大崩壊』を選び、書評してくれました。今後、AIの発達によって生産力が高まり、多くの労働者が職を奪われるだろうという予測のもとで、そうなっても人間が生活していくための政策としてベーシックインカムの導入を提唱する議論です。本書はもっとも応募数の多かった課題図書ですが、大内さんはその中で、著者の見解に対して真っ向から批判を展開して、異彩を放っていました。多少の誤解を恐れず、自分で考えた問題点をしっかりまとめた点が評価されました。
 その本を読みながら自分のなかに芽生えてきた発想を、逃がさないで下さい。付箋をはったりメモを取ったりして、浮かんだ発想をしっかりと捕まえて、なんとか言葉にし、自分でも理解を深めながら、他の人に伝えていく。書評とは、その営みが連鎖していく場です。本と書評とがつぎつぎと連鎖し、大きなうねりが図書館に発生する。そんな期待をもちながら、みなさんの来年の応募を楽しみにお待ちしています。

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