「書評コンテスト」にたくさんのご応募をありがとうございました。
厳正な審査の結果、次の通り入賞者を決定いたしました。
最優秀賞(副賞3万円)
該当作品なし
優秀賞(副賞2万円)
商経学部商学科4年 竹之下 友和 さん
書評『コンビニ人間』
商経学部商学科3年 山田 美緒 さん
書評『ヴェニスの商人』
国際教養学部国際教養学科3年 篠原 壮太 さん
書評『海と毒薬』
奨励賞(副賞1万円)
商経学部経営学科1年 鈴木 美蘭 さん
書評『コンビニ人間』
<審査員>
図書館長・図書館運営委員会
■表彰式
日時:2026年1月6日(火) 12時50分~13時20分
場所:図書館1階 マルチスペースでおこないました
審査委員長 講評
商経学部 教授 合原理映
書評コンテストは、今年第10回を迎えました。今回の課題図書は、古典作品の枠としてシェイクスピアの『ヴェニスの商人』を1冊おき、昨年発行された新しい本までさまざまな内容のものを7冊取り揃えました。応募作品もその中から5冊が選ばれていましたが、いずれをとっても皆さんが課題図書に真剣に向き合い、文章を推敲し、完成させたことがわかるもので、甲乙付け難いものでした。まずは、書評を書くという決して容易ではないことに真剣に向き合い、最後まで書き上げてくれた皆さん一人ひとりに、心からの敬意と感謝を伝えたいと思います。そして、その中でも特に優れた書評を執筆された受賞者の皆さん、本当におめでとうございます。
さて、書評を書いてみて、皆さんはこれまで取り組んできたレポートや読書感想文などとは異なる難しさや戸惑いを感じたのではないでしょうか。書評は、単に本の内容を整理したり感想を述べたりする文章ではありません。一冊の本を丁寧に読み込み、その主張や意義を理解したうえで、自分自身の視点から評価・批評し、まだ読んでいない他者に向けてその魅力や読みどころを伝える文章です。その過程では、本と向き合うと同時に、自分自身の考え方や価値観を問い直すことになります。書評を書くことは、内省の作業であると同時に、文章化を通して自己の思考を外部へ発信する行為でもあります。
文章の要約や解説という点に関しては、ChatGPTのような高度なAIが行うことのできる時代になりました。AIは私たちの学びに大きな変化をもたらしており、文章の要約や解説にとどまらず、内容的な評価まで容易に提示してくれます。このような時代において、人が書評を書く意義はあるのでしょうか?私は、書評を書く意義はこのような時代にあっても全く色褪せていないと思っています。先ほども述べましたが、書評とは、「その本を自分がどのように読んだのか」を自分の言葉で表現する行為であり、書評を書く過程は自らの思考の過程そのものを鍛え、可視化する営みです。皆さんは書評を書いたからこそ、この過程こそ、書評の醍醐味があると気づかれていると思います。AIは一般的で無難な評価を示すことはできても、一人ひとりの読書体験や問題意識に根ざした批評を代替することは難しいのではないかと思います。
さらに書評は他者との対話のきっかけにもなります。書評には書評を書く人自身の考え方や価値観、個性も表れます。そのため、読み手は書き手の考えに応答し、共感や議論が生まれます。AIが作った文章ではなく、一人の人間が書いた書評だからこそ、こうした生きた対話が可能になるのではないでしょうか。AIが高度化した時代にあっても、書評を書く意味は失われるどころか、むしろ際立っていると思うのです。
さて、今回の受賞者についてご紹介いたします。第10回は最優秀賞の該当作品はありませんでした。受賞者は優秀賞3人、奨励賞1人です。
まず、優秀賞は商経学部商学科4年竹之下友和さん、商経学部商学科3年山田美緒さん、国際教養学部国際教養学科3年篠原壮太さんです。
竹之下さんは村田沙耶香著の『コンビニ人間』について書評されました。書評としての文章力や批評力の高さが際立っていました。竹之下さんは本書の中で示された社会が暗黙のうちに押し付ける「推奨される社会人像」の暴力性をうまく説明し、筆者の着眼点である「普通」を的確に捉え、そこに焦点を当てて書評をまとめている点が高く評価されました。
山田さんはシェイクスピアの『ヴェニスの商人』について書評されました。本書はすでに多くの書評が書かれているという点で新たに書評を書くことの難しさにも挑戦しています。山田さんはシェイクスピアの古典を現代的な視点から読み解いている点が評価されています。物語全体を丁寧に説明し、友情、金銭、宗教的対立など多層的なテーマを当時と現代とを照らし合わせて書評をまとめることに成功しています。
篠原さんは、遠藤周作著『海と毒薬』について書評されました。先ほどのシェイクスピアと同様に、すでに数多くの書評が書かれている作品に、新たに書評を加えるという難しさがあった書籍です。この書評では、「神を持たぬ日本人の良心はどこから来るのか」という本質的な問いを抽出している点が評価されています。また、戦争という特殊な状況ではなく「人間の本質」「条件さえ整えば人はいくらせも残虐になれる」という、筆者が『海と毒薬』を通じて示そうとした普遍的テーマを的確に捉えている点も評価されました。
奨励賞は商経学部経営学科1年鈴木美蘭さんが受賞されました。村田沙耶香著の『コンビニ人間』について書評をまとめられました。鈴木さんは、「普通」という本書のテーマを的確に捉え、本書の登場人物の生き方を通じて現代社会の価値観を多角的に考察できていることが評価されました。「普通」の難しさやその定義の困難さを書評全体で表現できています。
第10回書評コンテストは、以上の4人が受賞者となります。みなさんにとって書評を書き上げたことが書籍との新たな関わりの始まりとなり、さらなる学びのきっかけとなることを願っています。これからも幅広く書籍を読み、自分に当てはめ、自分自身の考え方や価値観を問い直す機会を多く持ってください。新たな知との出会いの場となるよう、図書館でお待ちしています。
