第6回書評コンテスト結果発表

「書評コンテスト」にたくさんのご応募をありがとうございました。
厳正な審査の結果、次の通り入賞者を決定いたしました。


最優秀賞(副賞3万円)

国際教養学部 2年 小倉 実咲 さん 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

優秀賞(副賞2万円)

人間社会学部 1年 石井 小夏 さん 『変身』
サービス創造学部 3年 星 いぶき さん 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

奨励賞(副賞1万円)

人間社会学部 2年 石田 優希 さん 『スマホ脳』
国際教養学部 2年 小池 瑞穂 さん 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

審査員
図書館長、図書館運営委員会              

表彰式
日時:2021年12月7日(火) 12時50分~13時20分
場所:図書館1階 マルチスペースでおこないました

第6回書評コンテスト表彰式

審査委員長 講評
商経学部 教授 荒川 敏彦 先生

書評すること、自己を再創造すること

 昨年来の新型コロナウィルスの感染拡大により、大学での学修環境が大きく変容しつつありますが、活動が制限されるなかで、あらためて本をじっくり読むことの価値が見直されたように思います。ポスト・コロナに向けて、本を読むという行為がもつ新たな可能性が発見されてきたとも言えるでしょう。
そのような状況のなか、図書館では昨年度中止となった書評コンテストを再開することができました。応募してくれた学生の皆さんに感謝いたします。そして、そのなかから優秀な作品として選ばれ受賞された皆さん、おめでとうございます。

 図書館では、皆さんがつぎの時代の社会を作り上げていく力をつけるきっかけとして、この書評コンテストを活用してもらいたいと思っています。その力とは、著者との対話力、自己との対話力、そして他者への発信力です。
 本を読んだとき、著者の主張を理解するために、くり返し著者に問いかけるでしょう。読み進めるうちに、しだいに自分の意見が揺さぶられ、自分のなかでもう一人の自分との対話をくり返すことになるはずです。この著者との対話、そして自己との対話をくり返す過程こそ、新たな自己への転生の瞬間です。この「生まれ変わり」に至る過程に、自分の世界が広がる、本を読む愉しさがあるのです。
書評を書く営みは、一回読んでそれでおしまいにする通常の読書とは大きく異なります。書評は単なる自分の感想ではなく、より普遍的な知へと向かっていく精神の躍動です。そこには初読から、何をどう書こうかという〈意識的な読み〉があるはずです。書くために、一読で終わらず再読もするでしょう。問題を言葉にし、筋道だった論にまとめていく作業もあります。そのとき、三読、四読とくり返される対話の継続が生まれます。この対話の継続が生み出す力こそ、コロナ禍における読書の価値と言えるでしょう。
ところでそうした対話を重ねた思索の深化は、学生の皆さんが日々の授業で知らず知らずのうちに実践していることもあります。いま授業で学んでいる知識や考え方、生活の中の経験を総動員して、全身全霊でその本と向き合い、問題の核心に迫ってほしいと思います。
自分が注目したポイントは、著者からするとちょっとずれているかもしれません。しかし遠慮することはありません。それは著者のまいた多様な種が、著者の意図しないかたちで読者の中で発芽したということなのです。ひとりの読者として、自分のなかに芽生えたその芽を育てていきましょう。
 今回、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の書評作品が、小倉実咲さんの最優秀賞を含めて3つ受賞しました。この本が著者との対話、そして自己との対話へといつのまにか導いてくれる内容であったことも、優れた書評が多く出た一因だったかもしれません。『変身』の書評も『スマホ脳』の書評も、それぞれ著者との対話、自己との対話を重ねた痕跡の濃い作品が受賞に至っています。受賞作はみな、世界の複雑さや多様さを安易に単純化することなく、その影に潜む「排除」の機制にもしっかりと目を向けながら、いかにして世界と人間の複雑性を失うことなく共生していくか考えてくれました。受賞のポイントは、そのような対話の深さとその的確な言語化にあったと言えます。
 近年、課題解決力ということが叫ばれ、そのスキルの育成に向けた議論が盛んです。しかし、そもそも課題をどのように発見するのか、その点になると、これといった提言は見られません。一読の流し読みに終わらない対話をくり返す深い読書は、この問題認識の点に関わってきます。読書は、現実を前に何を考えるか、その現実から何を読み取るか、そうした問題発見の基盤となるのです。ですから皆さん、くり返し読んで立ち返る〈自分の1冊〉を学生時代に見つけて下さい。それが、生涯にわたる自己の成長の基盤になるはずです。
書評コンテストをとおして、本と書評がつぎつぎと連鎖し、対話する読書に向けた大きなうねりが図書館に発生し、学内の多くの仲間に伝わり、未来の社会へと広がっていく。そうして皆さんが豊かな感性を育み、よりよい未来社会を築く担い手になってくれることを期待しています。皆さんの来年の応募を楽しみにしています。

お問い合わせ
図書館コントロールデスク
E-Mail: lib@cuc.ac.jp

第6回 書評コンテスト応募要項

2021年8月1日より、第6回書評コンテストを開催します。
最優秀賞・優秀賞・奨励賞に選ばれた作品には賞金を贈呈します。
更に、ご応募いただいた皆さんに、もれなく参加賞あり!
応募期間中、図書館では課題図書を展示しています。ぜひ手に取ってご覧ください。

【応募期間】2021年8月1日(日)~9月19日(日 ※応募期間は終了しました。

【応募対象】千葉商科大学に所属する学部生

 書評コンテストについての詳細は下記をご覧ください。

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●課題図書一覧はこちら

 (タイトルをクリックすると蔵書検索の詳細画面にリンクします)

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